不平等な社会と人々の健康
新聞の書評を読んで興味を持ち、買ってみました。商用メルマガのコラムを担当しているのでそのための情報を探していました。
日本語の表題は、正確な訳ではないことがわかりました。読みやすい内容ですが、一般向けとは言い難いと思います。統計の知識や社会科学関係の学術書に特有な表現に慣れていることが前提です。そのような前提で言うと、論旨は極めて明快で読みやすいと感じました。ただし、工学系が専門の私には、表現が回りくどく、もっと端的に表現すれば、大分薄い本になると思いました。
テーマは、特定の社会における相対的(絶対額ではない!)な所得の違いが、その社会の構成員の健康に与える影響を、可能な限り厳密に、統計調査のデータに基づいて分析しています。統計は、相関や平均、パレート分布を知っていれば、十分理解できます。式を書いていないので、日本語訳の問題があるのかもしれませんが、部分的に理解しにくい記述があります。データをよく見て、逆算してみると著者の主張が理解できるでしょう。
テーマや内容は、新しいものではないようですが、専門家ではない私にとっては、大変有益な情報(分析結果)が示されています。著者の「公害や物理的な危険等でこのように多くの人々が影響を受けていれば、政府は何もしないわけにはゆかないが、所得の不平等が人々に与える影響については、その影響の大きさにかかわらず、何もしていない」と言う指摘は、資本主義社会の根源的な問題を射抜いています。
特に、これから社会に出る学生の皆さんに一読を進...